レーナードスキナードがやって来た、１９７７年１月のことです。そしてなんとアイドルワイルド・サウスと共同記者会見をやるという。「話がちゃうやないかー！！」それもええ方にちがう。全くの前座やと思ってたのに、願ってもない話。それも恐い怖いレーナードにその会場で初対面と聞かされ、そらビビったです。ところがこれがどっこい、また話がこんがらがってきた。レコード会社の方から紹介され、俺達のバンド名をきいたトタン、レーナードのみなさんえらいゴキゲンに、そして友好的になったのです、といいますか最初からええ人達やったワケであります。
会見のあとにミュージックライフの対談があり、ボーカルのロニーヴァンザント、ギターのアレンコリンズ、ドラムスのアーティマス・パイルと楽しく話しました。それにしても真冬やのに、ロニーがセッタで現れたのには思わず笑ってしまいました。アレンコリンズは、その日まで１９５６年製だと信じて疑わなかった僕のギブソンレスポールゴールドトップを見事、「これは６８年製、下手をするとデカヘッドの６９年のヘッド削ったやつかもナァー」と見抜いてくれ、悲しいやら何じゃらほいやら。アレンのエクスプローラーは、ぶ厚いジュラルミンのツアーケースに入ってて、それは大事にしていましたが、弾かせてくれたし、初日からえらいええ感じで、なんかいい予感がしてきましたゾー。
明けて公演初日。メチャ早く着きました中野サンプラザ。そらー一世一代、前座の集大成やもんナァー。当然前の晩は眠れず。でも元気いっぱつで楽器の用意も終わり、レーナードスキナードのリハが始まりました。舞台のそでで見学してもええデーとメンバーが声をかけてくれたので、ありがたく本場のリハとはいかなるもんかと興味しんしん。そして音が出た瞬間、ぶっ飛んだ。今まで聞いたことのないような爆音がステージ上でしとる。サイドモニターから出力されるロニーのＶＯの音量は、普段僕等がライブハウスで使っているモニターの約千倍ぐらいのデカさはあったです。ギター３人の音もクリアーで芯のあるひずみも出る。聞けばＰというメーカーのアンプを使っているのでしたが（僕達も同じＰやった）どうやら物がちょっとちゃうゾーちゅうくらいゴッツイ。
リハの後、さっそくスティーブゲインズに違いを聞くと、まず「スピーカーキャビネットの外観はＰやけど、実は箱そのものはМやねん。もちろんイギリスのな。ほんでスピーカーはＪＢＬに換えてあるねん」とのこと。そして、ヘッドアンプは通常とそんなに変わらんと教えてくれました。そら、３人のギタリストがそれぞれ６３年ストラト、５９年レスポール、５８年エクスプローラーやからギターもええワケやけど。これは勉強になった。このとき、デュエイン オールマンもスピーカーはＪＢＬやでと教えてくれました。このこの後、ボクは自分のフェンダーツインリバーヴにＪＢＬを入れました。しかし、僕には音がかたくて使いにくかった。ちなみに、好きなスピーカーはセレッションです。
１９７７年頃、たぶんストロボチューナーを除いて世界初？の針で測定するチューニングメーターがヤマハから発売された。それまで僕達は耳でチューニングするしかなかったのですが、この発明により早く、より正確にチューニングすることが出来るようになり、それはそれは重宝しておりました。当然、中野サンプラザの楽屋のテーブルにも燦然とかがやく新品のチューニングメーターはセットされました。
しかし、公演２日目、これが楽屋から消えた。「ドロボーに入られた！！」と思いましたね。あんなもん、ドロボーさん何に使うんやろと考えつつ、やさがししておりました所、レーナードのギターテックの人がニコニコして、なんとその手にはチューニングメーターを持っているではないか。「そうか、この人が取り返してくれたんや！！」ととっさに思ったのですが、実はそうではなく、まさしく犯人はこのギターテックやったワケです。あまりに便利そうなんでちょっと借りたヨ！！イヤイヤすまんすまんとニコニコして返しに来よった。僕達もひと安心。それにしても、アメリカの超一流バンドが前座のチューニングメーターを借りるとは！！これどない思います？次の日も、大阪の日もチューニングメーターは楽屋から消えていく。そのかわり、僕達前座のギターも彼が全てチューニングしたるワということになり、めでたしめでたし。さすがに一流のギターテックだけあって、全くチューニングが狂わなかったのはさすがでした。
そして最終日、今日は楽屋からメーターなくならへんナァーと思ってると、ゴッツイうれしそうな顔をして僕達の所へやって来て、「ホレ、ワシらも買ったデー！！」と同じメーターを見せにきてくれました。これでレーナードにメーターを米国まで持って帰られることもなくなり、一安心。ホンマにほのぼのしたええ時代でした。
レーナードの話はまだまだ続きます。
