中野サンプラザ２日目、僕達がステージへ楽器の準備に行った時のことです。半ズボンをはいてロングヘヤーをうしろに束ねた外人のおっちゃんが僕達のドラムセットを運んでいました。当時、アイドルワイルド・サウスにローディーはいなかった。ローディーとはアンプやドラムセットを完ペキにセットしてくれ、ギターチューニングから楽器全般を担当するテクニシャンのことです。ローディがいないので当然自分たちのことは全部自分たちでやっていました。唯一前座の時のライブ終了後だけはカッコがつかんので、マネージャーと何人かの友人がステージから袖までは楽器を撤収してくれていました。
「何で、外人のおっちゃん、ドラム運んでくれてんのかナァ？」とよくよくみると、なんとその人はレーナードスキナードのドラマー、アーティマス パイルではありませんか。そら僕達はびっくりしてもて、「僕等がやります、ライブ前なので休んでください」と恐縮して言いました。そうすると、アーティさん「かまへん、かまへん。ワシらもずっとこんな感じでやって来たんや。リハ終わってひまやから手伝うでー」と。そして僕等のリハをずっと見ていてくれた。
アーティとはミュージックライフ対談のときからから意気投合してたんですが、初日のライブ前に僕等のところへやって来て、「ボクが、アイドルワイルド・サウスをステージで紹介したる。日本語で神戸から来ましたアイドルワイルド・サウスですは何と言うんや」というドえらい展開になってきて、「ホンマええんですか。ではお願いします」ということで、アーティーは本番で声高らかにこう叫びました。
「コービィーカラ キタァ アイドゥルワァィルドゥ・サウス・デス」
そら、お客さんも喜んでくれたし、僕等もリラックス出来た。何といっても、前座独特の【ステージと客席との間の川の流れ】がなくなった。これはありがたかった。ＵＤＯ音楽事務所の方も「こんなラッキーな前座、今まで見たことないなぁ」とびっくりしていました。
そして、３０分程のライブの後半戦、僕達のスマッシュヒット？？？『マイ ダディ』を熱唱している時ふとステージの袖を見ると、アーティとバックグラウンドボーカルのホンキティーズのメンバーがいっしょにサビの詩をうたってくれていた。これには正直まいりました。すごいパワーをステージ袖からもらい、客席ももり上がって、前座としては最高なライブは終了しました。そして真打ち登場。ゴッツイパワーのバンドやいうのは１曲目の『ＷＯＲＫＩＮ‘ ＦＯＲ ＭＣＡ』で証明された。そのあとは怒涛の展開。このライライブに一番近いＣＤは「ＯＮＥ ＭＯＲＥ ＦＲＯＭ ＴＨＥ ＲＯＡＤ」です。久々に聴いてみて下さい。
場面は２日目のリハ直後に戻ります。アーティがドラムセットを手伝ってくれたので、そのお礼に行きました。アーティーは何度も「ＳＭＯＫＥ ＩＴ」と言っておりました。その意味は、「ステージを燃やせ！！」アーティーは熱いライブせえヨと教えてくれたのであります。アーティーは３枚目のアルバム「ナシング ファンシー」から加入したメンバーで、レーナードスキナードの前はどんなバンドにいたのかと思い、「アーティの前のバンドはどんなんやったんですか？」ときいたところ、「アイ・ワズ・ア カーペンター」と一言。「あっそうですか。カーペンターズのドラムたたいてたんですか」と言った所、「ちゃうちゃう大工さんや！！大工さん」と大声で笑っていった。
何でも大工さんをやりながらいろんなバンドをやった後、レーナードスキナードに迎えられたとのこと。自分でもラッキーだったと思うとしみじみ言ってました。あの事故のあと、最初のリユニオンから９１年まではバンドに参加してましたが、聞く所によると、飛行機には二度と乗りたくないという理由からバンドを離れたようです。今年、ロックンロール オブ フェイム。 ロックの殿堂入りを果たしたレーナードスキナード。そのメンバーの中にアーティーの姿を見つけました。今はメンバーではないけれど、その誇らしげな顔を久しぶりに見て、またいつかいっしょのステージに立ちたいナァと思いました。でも日本に来ることはないでしょうから、僕がアメリカ行かなあかんかー。いやぁ、がんばらなあかんなぁ。
ＳＭＯＫＥ ＩＴ！！やなぁ。
