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第37話 築地デビュー

宇崎竜童さんのバンドの活動の合間をぬってはじめてのソロアルバム制作が始まりました。

あの内定取り消しから1年以上が経過していましたが、所属事務所もバースデーソング(元レイジーの影山ヒロノブ君と同じ事務所)に決まり社長の山岸さんには同じ関西人ということもあり公私ともによくしてもらいました。ここに至るまでの1年数ヶ月は紆余曲折の日々で何度も挫折しそうになりましたが渋谷のエッグマンに出演したことをきっかけに山岸さんにお世話になることが決まり、ホンマにあっという間に決まったので物事が動く時、決まる時は一発やねんなあということをこのときはじめて思い知りました。

ああでもない、こうでもない、と言うててこれまでで上手いこといった事などただの一度もなかったなあと今改めて思い返しています。SLIDIN‘&SLIPPIN’をレコーディングするときも現レーベルの大瀧さんに電話して3分後には決まったくらいですから。
いつまでも感謝の旅なのであります!!!

レコーディングは温かい季節に始まりました。築地に程近いオンキョウハウスは当時はええリズムトラックが録れることで有名なスタジオでした。そんな恵まれた環境でのツキジデビュー、いやソロデビュー。レーベルは佐川急便が立ち上げたリバースターレコードで橋幸夫さんと同じ会社でした。アルバム発売告知のチラシ、今でいうところのフライヤーも橋さんと僕が紙面の半分づつを飾るという、光栄ではあるのですがちょっと微妙なムードのデザインにスタッフ全員が思わずびっくりしたりもしましたが、それもレコード会社の配慮。2枚看板でっせーという意気込みを感じましたし、今にして思えば記念に1枚おいておけばよかったと後悔しております。

レコーディングは難波正司君が全曲のアレンジとキーボード、新井武士さんがベース、吉岡貴志君がドラム、このメンバーで殆んどの曲を録りましたが、ゲストで元ツイストの世良公則君、鮫島秀樹君、神本宗幸君、元サザンオールスターズの大森隆志君、アコースティックギターには田代耕一郎君、難しいギターソロには初対面でしたが難波君の紹介で今剛さんも参加してくれました。

メンバーのクレジットが正しいかちょっと気になったので箪笥の中から古いオリジナル盤をひっぱり出してきて確認しましたところ、なんと鮫ちゃんがベースの他に以外な事をやっているのを発見しました。鮫ちゃんがやってくれたのはローランド808という当時はやりのリズムボックスのプログラミングで、僕がホール&オーツみたいなリズムにしたいと言ったら「おお、そんなん簡単やで、オレがやったるわ」と次の日「ほんならやろか、草津&大津」とギャグを飛ばしながら機械ごと持ってきてくれたのでありました。それにしてもいつも絶妙のタイミングやなあ。

皆さんの協力のおかげでレコーディングは順調で13日間で終了しましたが朝まで掛かった日も何日かはありました。そやけど朝までやると築地で寿司というオマケがついてくるので、ひょっとしたら無理やり朝までやった日があったやもしれません。寿司にはまった僕と吉岡君は朝まで待って個人的に行ったりもしました。そんな思い出の築地ですから今回の移転問題は少々気になるところではあります。

そうや、こんなこともありました。レコーディングの途中で宇崎さんの沖縄でのコンサートがありスタジオを中断して1泊2日の沖縄ツアーというのを体験しました。ライヴのあとの打上げで憧れのヒバチステーキを食べながら宇崎さんと長い時間話をしました。宇崎さんの苦労話など勉強になることをいっぱい教えてもらいました。他のメンバーはもう一泊くらい沖縄に滞在したと記憶しますが僕はトンボガエリでした。ただツイストの時に憶えたテクニックで空港でのチェックインの時に一言アッパーデッキで御願いしますというと2階のファーストクラスの席に追加料金なしで座れたので、この時も1人悠々と大きなシートで帰って来れたのでありました。古き良き時代のお話です。

さて築地へ戻りレコーディングは無事終了しミックスもマスタリングも済んで一段落して家で出来あがったばかりの「THIS TIME FOR YOU」と題されたアルバムをドキドキしながら聴きました。ところが何度聴いても変な箇所があるんです。ブラッドショットの小林和之君作でシングルにもなる予定の[もしもし]という曲のもしもしがどう聴いても「もしも」にしか聴こえない。それも全箇所がそう聴こえます。

えらいこっちゃということですぐ山岸さんに電話して歌いなおしを御願いしました。山岸さんは快く引き受けてくれたのですがアルバムのサンプル盤だけはどうしようもないということが後日わかり、アルバムは2種類のバージョンが実は存在しています。そやけど発売された方はしっかり歌いなおしているバージョンなので[もしも]を聴いた人はごく少数の関係者だけやと思います。

アルバム発売記念のライブは渋谷エッグマンと大阪のキャンディーホールで行いました。この時のバンドは吉岡君、神ちゃん、鮫ちゃん、新井君、僕の5人に加えキーボードを宇崎さんのバンドでいっしょのラッキー川崎さんが手伝ってくれました。ツインギター、ツインキーボードのなんとも贅沢なバンドサウンドでした。

さてレコードのプロモーションが始まりました。当時は有線放送にご挨拶にいくのが主流?だったのか、東京中の有線回りをしました。忘れられないのはレコード店へのご挨拶回りで(だんだん演歌の匂いしてきましたでしょうか?)ある都市の大きなレコード店に伺ったときのこと。お店の前には僕のポスターが何枚か貼られてあり、その前にはビール瓶のケースが2つ並んで置いてあり、マイクスタンドと簡単なカラオケセットも設えられてあるではありませんか。

僕は事情をすぐに察知したのですが、まさかこちらからは何も言えない立場なので黙っていました。このときは山岸社長も同行していなかったので、さてどうしたものかとまずはお話を聞こうとおとなしくお店の方と談笑などしつつ、今から何が執り行われようとしているのか静かにみておりました。もうお解かりやと思いますが、ビール瓶の箱の上で「もしもし」をハンドマイクで歌うことがその日のメーンエヴェントでありまして、準備が出来たらお店の方が通行しているお客さんを呼び込みますとの説明があり、これはイッパツ歌うしかないかと一瞬腹をくくったのですが、これをやったら自分はきっと終わるやろなと思い勇気を振り絞ってレコード会社の担当の方とお店の方にごめんなさいをして挨拶だけにしてもらいました。

どんな言い訳をしたかは今となっては忘れてしまいましたが、お店の女性の方が「この曲、ジョー ウオルッシュみたいなロックですからカラオケはちょっとねえ」と発言してくれました。この一言がきっかけで挨拶だけになった次第で。思わぬ援軍が現れて事なきをえました。まさに人生いろいろであります。

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コメント (2)

たれぱんだ:

ビールケースの上で歌う松ちゃん、見てみたかった!

体調は大丈夫ですか?

今日は3月3日。
こちらは雪が降っています。

田代耕一郎:

なんだか自分の名前を検索してみたら、こんなところに行きついた。まっちゃん、元気?その節はいろいろお世話になったけど、ワシも元気や!

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