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第42話 1年くらい遊んでてよ

エピックソニーに入社した日のことを書こうと決めてから早や1ヶ月。書けなかったというか、パソコンのキーボードに触れることもなく1月は通り過ぎていきました。正に「Life in The Fast Lane」であります。2月は28日しかないので、3月がすぐにやってくるのは最早明白で、そうこうしていたら大嫌いな梅雨がやって来て、瞬く間にクマゼミが大合唱を始め、鳴きやんだと思ったら木枯らしが吹いてうめ丸の温泉と鯛が恋しくなる。「ワーッこんなことしてたらイッチョウ上がりになってしまうぞ」ということに気づき、やっと机の前に座った次第であります。

ウーンしかし何を書いて良いのやら。今までとは違ってなんせ責任ある社会人時代の話であるからしてエエかげんなことは書けない。数ある逸話も今となっては時効やから思いつくままに書き進めればよいとも思うのですが、どうも気が乗らないので路線を変えようかなと思案中。ということで小休止。



今年は新年からずーっと夢を見続けています。少なくとも2日に一度は見ます。一晩に何本も違う夢が上映される時もありますが、夢というのはホンマによく出来たもんで起きたら忘れてしまってるパターンが殆んどなので、このコラムを「ドリーミン&ランブリン 善ちゃんの夢日記」に変更するという画期的アイデアは露の泡と消えていきました。
ゴーストライターに代筆してもらうという手もあるぞ!!とも考えてみましたが、そもそも僕のアホな話をよーく聞いてくれてそれを文章におこしてくれる人などこの地球上にいるわけもなく。
ではボチボチはじまりです。

朝礼が終わり、与えられたデスクに座ってはみたものの何をしたら良いのやらさっぱり解からない長い長い午前中でした。やっと昼休みになり社員の方達と近所の定食屋さんに行ったのですが、緊張で何を食べてどんな会話をしたのかを憶えていません。唯一憶えているのは「電話に出てね」と言われたこと。

「そうや、電話の取次ぎをしたら時間つぶせるなあ」と午後からさっそく電話デビューしてみましたものの、出社していない社員の方への伝言を電話の相手の話を聞きながらメモを執るするだけでくたくたになってしまいました。僕は漢字をあまり使わないので、メモを書き直す必要がありました。辞書を引いて漢字に書き直して間違いがないかもう一度校正して。メモに校正なんか要らんのんですが、ちゃんとせなアカンと思ったんですね。そんなことでしたから1時間程でギブアップしました。

何かいい手立てはないものかと周りを見ていますとあるディレクターがヘッドフォンで音楽を聴いているのが目に飛び込んできました。「よっしゃ!!これや」さっそく僕もそれにならい、買ったばかりのカセットウォークマンで音楽を聴き始めました。

もちろんノートとボールペンを用意してそれらしく振る舞うことにしました。そやけど無理して聴く音楽ほど苦痛なものはありません。そこでヴォリュームをゼロに落して聴いてるフリに変更。テレビの音楽番組等で予め録音された演奏を聴きながら、さも楽器を弾いているフリをするのを音楽業界で‘アテ振り’といいますが、僕の場合は‘聴きフリ’ですね。

これで電話には出なくてすみましたが、じっと座っているのに今度は飽きてきました。落ち着きのないヤツなのであります。仕方がないので、トイレの便器に座って用も足さないのに休憩をしました。

トイレから戻ると、上司の小坂さんがちょうど出社されて僕の出で立ちにまず爆笑。何せジャケットに革靴ですから小坂さんもさぞおかしかったやろうと思います。

「僕は何をしたらええのでしょうか?」という質問にいとも簡単に「1年くらい遊んでてよ。会社におらんでええよ。レコード屋さんに行ったり、ライヴ観たり、好きなことやっといて」とおっしゃいました。これにはびっくりしましたが悪いお話ではありません。「エエ会社に入ったなあ。レコード屋へ行くのもライヴ観るのも仕事か。ゴッツイなあ」と、このときはただただラッキーやなあと考えていました。

そんな有り難い話をしていますと、ブラッドショットで一緒やった小林君が出社してきて「松ちゃん、ジャケット似合わへんなあ」と、これまた大爆笑。ここらあたりで気持ちもぐっと楽になってきて、やっと居場所がみつかった気分になりました。しかし30分も経たないうちに小坂さんも小林君もスタジオに行ってしまい、仕方がないのでまた聴き振りタイムに突入。
夕方になり終業のベルが鳴ったと同時にヘッドフォンを外し僕はデスクの上をキレイにかたずけ「皆さん、おつかれさまでした」と一礼して退社しました。

あとで知った話ですが、終業のベルが鳴ったとたんに退社した入社一日目の僕のことはちょっとした話題になったそうです。レコード会社の特権?で出社時間も特に何時とは決められていなかったですし{朝までレコーディングということがしばしばありました}夕方にしか現れないディレクターもいたくらいですから。そんなことで僕の定時退社は前代未聞だったというわけであります。

まっすぐ家に帰りました。何をしたというわけではない一日でしたが、ドット疲れが出たみたいで三軒茶屋まで地下鉄の中で熟睡してしまいました。なんとか直前に目が覚めて乗り過ごさずにすみましたが、ホンマにクタクタでした。

畳の上で大の字になって寝転がっていますと、またしても電話が鳴りました。もう電話はたくさんやと思いつつ受話器を取りますと、相手はオフコースのドラマーの大間君でした。「松ちゃん久しぶり、元気にしてる?ところで今どんな音楽活動してる?実はね、いまTがね、ギター探してるんだよ。オリジナルメンバーが脱退してとりあえずサポートギター探してるので、松ちゃんを推薦したんだけどどうかな?いいバンドだと思うよ」(注)TといってもTWISTではないですよ。

「大間君、僕ね、今日就職してん。そやからものすごい嬉しい話やけど、これはお断りするしかしゃあないなあ」
大間君はしばらく説得してくれましたが「残念だけど仕方ないな」ということになり、僕の一日にしてミュージシャン復帰という快挙?はなくなりました。
もしもこのお誘いが入社前日やったとしたら、どないなったやろかと考える時が今でもあります。

就職した当日の話というのが何ともゴッツイなあと。
そして電話をくれた大間君には今でも感謝しています。ちなみに僕はオフコースが大好きです。

次の日も、またその次の日も、ヘッドフォンが欠かせない日々が続きました。

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