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第30話 箱根

LADYという新曲のレコーディングのため箱根にある由緒正しいロックウェルスタジオへ向かった。東名高速から小田原厚木道路を経ていよいよ箱根に到着かという時に苦い思い出がいきなりよみがえってきた。箱根に来るのは今回が2度目。1度目は中学3年生の修学旅行の時でした。早朝、三宮を出発した鈍行列車が箱根近くの国鉄の駅に到着したのが午後4時頃。どの湖かは忘れてしまいましたがとにかく大きな湖の畔の大箱の旅館に投宿。部屋割りの後すぐに夕食がはじまりました。

ゴッツイ大広間であります。なにしろ約450名の生徒プラス先生方も思いのほか多数なもんで。周りを見渡すとなんと先生方は舞台の上に特別に設えられたお膳で食事されている。その光景は滑稽としかいいようがなかった。見たわけではないのでウソかホンマかは知りませんがある生徒によるとメニューもちょっと違うぞとのこと。まあおおらかな昭和の時代のことであるからしてこれは全然オーケー。

しかーし、全然オーケーやない事件が勃発してしまいました。食後はグループごとに温泉旅館やのにええ?というくらいの短い入浴タイムがあったのですが、なんと僕らが入浴中に女子風呂を覗き見したとX主任?教頭?が怒り心頭で僕らの部屋に怒鳴り込んできた。僕ら以外にも数名疑われてる生徒がいて、いくら『覗いていません。絶対覗いてない』と訴えても聞き入れてくれない。

10数名の生徒が廊下に正座させられた。1時間以上もである。廊下を旅館の人達、そして級友たちがくすくす笑いながら行き交う。これにはさすがの僕もキレましたね。しかしここで文句言ってもどないもならないことはわかっていた。いやあ、世の中にはホンマに悪い奴がおる。そしてハメラレルことがるということをこの時改めて認識しました。

きっと実際に覗いた奴らが僕たちの責任にしたのだろう。そのイージーなウソすら見抜けない教師も正味やし。疑いが晴れないまま正座から解放された僕たちは部屋で思い切り枕投げをした。そうでもするしかなかった。今のように父兄にパワーのある時代ではなかったし、いっそのこと誰かの親がモンスターペアレンツ化して学校に怒鳴り込んでくれたらよかったのにと思う。この事件のことで後日父兄の呼び出しはなかった。グレーなまんまで終わったというかうやむやにされてしまった。全くの泣き寝入りである。冤罪事件がたくさんあるこの国ではありますがまさしくこれもちっぽけではありますが冤罪事件です。

『それでもボクは覗いていない』ともう一度ここではっきり言っておきます。
しかし修学旅行も悪い思い出ばかりではありません。前にも書いたかも知れませんが品川駅へ向かう途中バスの車中から六本木の街のネオンサインの中にフィリップスレコードのでっかい看板を見つけ『よっしゃ、こないなったからにはグループサウンズに絶対なったるぞ』と1人決心したことが将来的に実現したのでまあX主任のことは許したるわ!!!!!!
というような過去を思い出していますと早くもロックウェルスタジオに到着。今回は大きな湖の畔ではなかった。そしてまたもや部屋割り。そやけど今回は女子生徒がおらんので超安心。思ってた通り鮫島秀樹、神本宗幸と同室になった。

録音の前にそれぞれ部屋ごとに買出しに出掛けた。僕らは調理が面倒くさいので缶詰と納豆に卵、牛乳、パン、米、コーラ等を購入。これで録音に専念できるとひと安心。楽器のセットを入念にして音決めが始まった。昔から由緒あるスタジオと聞いていたのでさぞ豪華な所やろなと想像していたのですがこじんまりしたスタジオでブース(音を同時録音する場合他の音が被らないようにするためにアンプ等を入れる小部屋)が考えていたより少なかったので一瞬とまどいましたが、郷に入れば郷に従え方式で順調に録音は進んでいきました。今となったらB面がどの曲だったのかは思い出せなかったのですが後で調べましたらなんと鮫島秀樹作曲のIKARETERU HIKARETERUでありました。

LADYは世良君のヴォーカルと僕のギターソロを残すところまできまして、本日はこれにてお開きということになり、さっそく缶詰パーティーが始まりました。あーでもない、こうでもないなどと喋りながら食べていますと、何と神ちゃんが納豆に砂糖をかけて食っているではありませんか。これにはビックリ仰天やったんですが、先日(正確には4年程前)淡路島でこの納豆with砂糖の話をしますとあっさり否定されました。『なんぼなんでも納豆に砂糖はかけないよ』でも確かにかけたん見たんやけどなあ。

この事件も迷宮入りです。僕が当時大好物やったサバ缶を満喫していましたところへローディーのスパンキーがやってきて向こうの部屋ではすき焼きですよと教えてくれた。この夜を境にバンドに大きな亀裂が入ったのはいうまでもありません(それはウソですけどちょっと腹たったのも事実)その次の日からは全員同じメニューになったことを付け加えておきます。

LADYでどんなソロを弾くかがかなり肩に重くのしかかってきた。スライドはあわないし
いろんなパターンを弾いても安井君からのオーケーがでない。誰かがビートルズみたいにやればと言ったのでちょっとそれっぽく重いメロディーを弾いてみた。世良君が『こんなメロどうかな?』とアイデアをだしてくれていいソロが弾けた。そのソロに1オクターブ上の同じソロをダビングしたらこれがええ具合にはまりオーケー。

世良君の歌はいつも1回か2回でオーケーになる。もちろん今みたいにプロトゥールスなどないので正真正銘の一発録りやし音程の直しなどなし。世良君は美空ひばりさんのような音程の良さと表現力を持っているヴォーカリストやと今でも僕は思っています。92年にリターンというアルバムの録音でLAに行った時もマークゴールデンバーグ氏がリンダ ロンシュタットと同じくらいうまいなあと何度も何度も褒めたなあ。

LADYは無事完成し、テレビ、ラジオ、取材の日々がまた始まりました。しかし半年にわたるツアーを終えたツイストの人気にちょっとかげりが出てきていました。常連だったザベストテンにこの曲は入らなかったのです。そういうとツアー中に出した『身に覚え』も入らなかったし、内心ウーンとは感じていましたが次を頑張ればええんやと前向きに考えることにしていました。大体ロックバンドがテレビにでるのが珍しい時代やったわけやし、ある意味ツイストやゴダイゴはフロンティアのパイオニアかもなあと思います。

この頃よくサザンのメンバーと家を行き来するようになりサザンロックの話ばっかりしていました。サザンはゴッツイ売れてきていてその忙しさにシェーッと言ってましたが今もバンドは続いているしシェーッというようなスケジュールでの活動ではないので一生涯続けてほしいなと切に願っています。帰れる場所があるのはとても素晴らしいことやと思います。

この年は紅白歌合戦への出場もなく年末から神戸に帰れたので休み好きの僕にとっては最高のお正月になりました。しかし次のアルバムの準備のためすぐ東京へ。新しいアルバムには外部からプロデューサーを迎えるとの発表がありちょっとイメージチェンジが行われそうな予感がありました。そやけどこの時はまだ使用楽器の制限まであるとは夢にも思っていませんでした。次回はちょっと重たい話かなあ?いや、やっぱり軽めにいきましょう!!!!!


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コメント (4)

りんごチップス:

♪LADY いいですね~^^
11枚のシングルの中でもマイベスト5に入る大好きな曲ですし、ファンの間でも人気の高い隠れた(?)名作です。
日記を読んでいたら久々に聴きたくなりましたが、今はプレイヤーがないのでレコードは聴けません(ToT)
『This time for you』も聴きたいのに~。

yau:

いつも楽しみに読ませて頂いています。
その度に自分自身の懐かしいツイストの思い出を辿りながら…

LADYのB面、サメちゃんの曲でしたね。確か、ドラマのエンディング曲にもなりましたよね。
ちょうどあの曲は、ラジオ番組でそれぞれメンバーが曲を作って披露すると言った課題があり、松浦さんは『ロングツアーはきびしいぜ』って曲を作ってこられましたね(笑)
ハードロックパーティのツアーでかなりきびしかった思い出をうたった曲。
世良さんと金太さん以外の曲を聴けるという機会はそれまでなかっただけに、当時録音していたカセットテープは本当に何度も楽しんで聴いたものです。
それと共に、当時発売されたモノクロの写真集がLADYのシングルの歌詞カードと同時期に撮影されたもののようで、レコードも含めその写真集も、およそ25年経った今でも大切に残っています。

これからもブログ、楽しみにしていますね。

r:

 はじめまして。rと申します。
 大好きな泉洋次氏の1stアルバム「ドンツ・ビー・ブルー」(1979年夏頃のレコーディング ドラムは後のDTの浅岡タカシさん)で松浦さんがギターとして参加されていることがわかり、ここにコメントを書くことにしました。当時のこと、泉さんとのことももし覚えていることがあればしりたいので、ぜひブログにて取り上げてもらいたいです。ぜひ!!

toshi:

松浦さん久しぶりですね。大江千里さんのLAレコーディングで知り合いBand Has No Name,Sparks Go GO,Twist等と80年代後半から90年代中ころまで、一緒に楽しく仕事させていただいたことを昨日の事のように覚えていますよ。LAのあちこちにも行きましたよね~、いつだったかイーグルスを見にLAに来たときに我家にも泊まりにこられたことがありましたね。数年前に発表されたSlidi'&Slipin'も毎日聞いています。ごっつうええ音出してますね~、50過ぎても好きなギター弾いてロッケンロールにどっぷりつかっている松浦さんがうらやましいいです。これからもお体に気をつけてがんばってください。
LAからでした。

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